変な人々

私の働いている会社はヘンなところだ。
ソフト開発をしていたり、マルチメディア制作をしている会社なのだが、そういうところの常なのか、変な人間が集まっている（←とりあえず自分は棚上げ）。
社長がその代表だ。

ある日の社長はこうだった。

その日は月曜で、教材用ソフトの打ち合わせの為、取引先へ午後から行く約束があった。先週の木曜から入っていた予定だったので、同行する猿山くん（仮名）は念を押した。
「社長、今日約束は1時ですから。12時には出ますから忘れないでください」
「ウン、わかったわかった」
社長がアポを忘れてあとで社員が尻ぬぐいをすることなど珍しくないので、しっかり確認しておかないと自分がひどい目にあうのである。
しかしその時、社長がふとこう漏らした。

「あ、今日はもう一つ約束があったっけ」

猿山くん（仮名）は聞き返した。
「……大丈夫なんですか？」
「うん、いいよ。大丈夫」

その日の午後1時半。上司の東田さん（仮名）が慌てていた。
「まいったなぁ。社長どこ」
「社長は先週からの約束で、打ち合わせに出てますけど」と私が返事をすると。
「うそっ！　なんで！？　まいったなぁ。え、それいつの約束？」
「確か木曜くらいには決まってたはずですが」
東田さん（仮名）はちらりと後ろを見た。お客様が固まっている。
「……こちらは1ヶ月くらい前からの約束なんだよ……。（お客様に向かって）たしか、かなり遠いところからいらしてるんですよね？」
「ええ、そうですね……」
全員顔色ナシである。

「まったく、アイツは自分のスケジュールも覚えてないのかよ！（←東田さんは社長が若いころからの親友なのでタメ口）」
と愚痴りつつ、仕方なく東田さんは社長の替わりに遠方からのお客様の相手をしていたのだった。

猿山くん（仮名）はこの話をあとからきいてげんなりしていた。
「……大丈夫っていうから……てっきり誰か他の人に頼んだんだとばかり……信用したのが甘かった」
「そいで社長は？　戻ってきたのは猿山くん（仮名）だけ？」
「社長、他に用事があるからって。秋葉に行ったけど」
「ゲルニしたな〜。東田さん（仮名）に怒られるもんだから」

しかしその東田さん（仮名）も前科がある。
12時からクライアントも交えての会議という予定を忘れて、食事をしにでかけてしまったのである。
姿が見えないので携帯に電話を入れたら、
「えっ！うそ！（←口癖）　俺いまラーメン食いにきてんだよ」
「すぐ戻ってきてくださいよ」
「無理だよここ新宿だもん。いまラーメン来たとこだから30分はかかるよ」
うちの会社は神保町にある。なぜ昼に新宿までわざわざラーメンを食べにいくのか……。

こういう上司を捕まえるためには、前項の「携帯電話」は確かに便利で必須なアイテムではある。
ただししばしば、電源を切られていたり、呼び出し音が社内から鳴り響いたりして（←要するに持ってでていない）げんなりさせられるのではあるが。