映画「めぐりあう時間たち」を観にいく前に読んでおこうと思い立った「ダロウェイ夫人」を、金曜の夜に読了した。自分で読もうと思っておいてナンだが、思った以上に面白かった。
今回読み方がちょっと変則的で、翻訳本を2冊と、原書本(ペンギン版と呼ばれるペーパーバックのもの)一冊を順に読んだ。訳本はみすず書房版と集英社版で、順序としてはみすずが先、集英社が後に出たものである。

みすず書房版も含めた過去の訳本も参考にして訳されたという集英社版は、文章としても非常に読みやすく、また資料的にも訳注が多く楽しめた(小説として読むには訳注は必要ないが、巻末にまとめられているのでその場合は無視すればよいのだ、という作りも好ましかった)。
2冊の細かい部分での訳の違いや表現の違いも比較して面白かったのだが、まぁなんといっても中身がよかったのだ。2冊の訳本を読み込んだあとで原書を読んだので、英文の流れもつかみやすく、「あーこういう風に原書は書いてあったか」と納得したり。

「ダロウェイ夫人」は1997年に映画化もされているが、この時ダロウェイ夫人を演じたのは私の大好きな女優、ヴァネッサ・レッドグレーヴなので、これも一度観てみたい。
小説の中で“カケスのような雰囲気がある”と表現されたダロウェイ夫人と、ヴァネッサ・レッドグレーヴはぴったりであるように思う。

ヴァネッサ・レッドグレーヴが出てくる映画ではじめて観たのは、「ジュリア」だったと思う。作家リリアン・ヘルマンの回想録で、幼なじみのジュリアとの交流を描くものだが、活動家であるジュリア本人はなかなか画面にあらわれない。ジェーン・フォンダ演ずるリリアン・ヘルマンが彼女を探し、活動の為の資金を運び、奔走する。活動家という道を選んで危険に自ら身を投じているジュリアが、姿はなかなか見えないながらとても魅力的に見えた。そして現れたジュリア……ヴァネッサ・レッドグレーヴは強いまなざしと凛々しい容姿で、一層印象にのこった。彼女はその年のオスカー(助演女優賞)も獲得している。

そういえばこの映画は(端役ではあるが)メリル・ストリープの映画デビュー作でもある。
「ジュリア」の2年後には彼女自身もオスカー・助演女優賞を受賞の素晴らしい活躍をしているし、この人も大好きな女優だ。
今や「めぐりあう時間たち」では3人の主人公のうちのひとり、堂々たるベテラン女優なのだ。

女優だけでなく、「ジュリア」で思い出されるのはダシール・ハメット役のジェイソン・ロバーズ。ハメットは「マルタの鷹」などの小説で知られる作家だが、作品から受けるハードな印象とは違い、映画ではソフトで淡々としかし愛情厚く、妻であるヘルマンを包む夫としてジェイソン・ロバーズが好演していた。後にハメット自身を主人公にしたフィクション映画「ハメット」でハメットを演じたフレデリック・フォレストもよかったが、やはり実像に近い(のではないかという)イメージで、ジェイソン・ロバーズの方に軍配があがる。

こうして本を読んだがためにまた観たい(観直したい)映画が増えた。
しかし「ダロウェイ夫人」も「ジュリア」も、DVD化されていないので残念。されていたらされていたで、財布が苦しくなるのも確かなのだが。


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