いい意味で。

2003年6月13日
何年か前、夫くんを含めた友人達の間で言い回しの遊びをしたことがある。
それは、なんにでも「いい意味で。」と文末につけてしまうというもの。

「隊長ってサイテーだよね〜、いい意味で。」
「ハラくんはバカだよね〜、いい意味で。」

どんな悪口雑言も、「いい意味で。」と付けるだけであら不思議、好意的に聞こえてくるのだ!
……なんてワケはなく、悪口は悪口なのだが、妙に可愛らしくなるというか「許せちゃう」風になるのだ。もちろん、言った本人がではなく、サイテーとかバカとか言われた方が、である。

サイテーな隊長は“いい意味で”許され、バカなハラくんは“いい意味で”可愛らしい対象に変化するのだ。

これが発展すると、数人で散々バカにしたりコケにしたりしたあと、全員で
「いい意味でね。」
とやる。もちろん、陰口では洒落にも遊びにもならないので、コケにされる本人も輪の中にいるのである。遊びなので、たとえば肉体的欠陥はあげつらってはいけない、というような暗黙の了解もある。ひたすら「ケチだ」「ガキだ」「童貞だ(←これは肉体的欠陥ではないらしい。インポではアウトだが)」「女たらしだ」「二枚舌だ」「遅刻魔だ」などとやって、「いい意味で。」としめる。
やられた方は、つまり皆から可愛がられ好かれているということでもあるので、怒るに怒れないし、怒ったら無粋だとわかっているので複雑なキモチだ。

さらに進んで「悪い意味で。」というのもあった。
こちらは
「ゴトウさんは二枚目だよね。悪い意味で。」
とやるので、ゴトウさんは途端に悪い人になってしまう。二枚目だというだけでもう悪い人だ。理屈抜きだ。でもやっぱり、愛されているからこそネタにされるという構造は同じ。
「釈然としないなぁ」
といいつつ、目が笑ってしまうのはそのせいだ。

この不条理さを面白がって遊んでいたのは大体平均年齢35歳ぐらいのいい大人たちなのだが、オトナでないと逆にこういう遊びは出来ないのかもしれないなぁと思った。子供だと誰かがムキになって本気で怒ってしまって、イジメなんて話になりかねないもの。

考えてみればその時のメンバーは皆、変人ばかりだった。変な編集者、変な音楽評論家、変な作家、変なサラリーマン、変な旅館のおかみ。もちろん、いい意味で。


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